退屈しのぎの好奇心

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第1章~ワイシャツの中身~

慧といるのは退屈だった。

いつもスマホを弄り、声を掛けても二つ返事で会話は広がらない。

いつもは5人くらいでつるんでいて、その時は慧の退屈さなんて気にもならなかった。

寧ろ俺たちのしたい事を優先させてくれる楽な存在だった。


けど、他のメンツが試験で遊べなかった時、慧と2人きりで遊んぶ事になって「なんでもいい」しか言わない詰まらない奴だと知った。

だるくなった俺は慧の家に行くことにして、漫画本かゲームでもやって退屈をしのごうと考えた。

だけど慧の家にはそんな娯楽もなにもなく、こいつと話すしか他なかった。


話しているうちにイライラして、俺は寝ると言った。

その時にベッドを借りた。

すると慧は俺が寝転がっている隣に腰を掛けてスマホを弄り出した。


何で俺はこいつんちで寝てんだよ…。

会話する事もなく、慧は慧で1人でいるのと変わらず猫背になってスマホを弄っている。


1人でやれることを2人いる空間でやっていることが只管つまらなくて、俺は起きあがった。

猫背のまま顔を向ける慧の視線を無視して、その丸まった背中を背もたれにした。


「……重てぇな」


その一言を笑いながら漏らす慧に、ようやく一緒にいる理由を見つけられた気がした。


それからだ。

慧に声を掛けるのではなく、触れて、反応を見るようになったのは。

そしたらいつのまにか、2人の日は慧の家で遊ぶことが増え、背もたれに使っていた猫背を抱き枕の様に抱き締めるようになった。


もちろん2人きりの時だけ。


ツンツンと尖った髪が頬に触れ、ワックスの香りがほのかに鼻をかすめる。

猫背を後ろから抱きしめて、肩に顔を埋めている。

顔を少しでも動かすとワイシャツがくしゃっと音を立てる。


「なぁ、さっきから誰とラインしてんの?」

「んー…?内緒」

「女かよ」

「そうかもな~」

「あっそ」


慧の恋愛事情も、女との友好関係も興味がなく追求したことはなかったけれど、それなりに相手してくれる奴はいるんだろうと思っていた。

俺自身もまったく女っ気がなかったわけじゃない。

今現在彼女はいないものの、欲求不満というわけではなかった。


だけど、退屈の中で感じるワイシャツ越しの体温に、慧の生身を想像してしまっていた。

服を着ているから、さほど怪しまれないだろうと、手のひらで体温を感じながらゆっくり撫で上げてく。

その都度ワイシャツが擦れて乾いた音が立つ。

俺の頭の中で撫でた部分のワイシャツが溶けて肌が見えていく。

女とは違う…、身体付きの。 


そんな妄想は慧に腕を掴まれて止められた。

俺の手つきは無意識にイヤらしさを伴っていたらしい。

無言で元の位置に戻して手を離す。


何でも受け入れて流すようなコイツでもボーダーラインは存在するようだった。


だけど、俺らはすぐに一線を越えた。