退屈しのぎの好奇心

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第1章~ワイシャツの中身~

「今日さ、南のケツ見てたよな、お前」


その日も態々2人の時間を作ってセックスした。

ティッシュで慧の出した精液を拭き取りながら指摘すると、悪戯がバレた時の子供のように眉を顰めて食い縛った歯を見せた。


「だってエロいじゃん、あいつ」

「わかるよ。俺も見てたし」

「凪もかよ〜」


唇を尖らせる慧はガシガシとうなじを掻く。


「慧は、女とヤッたことあんの?」


俺の自然と口から出ていた質問で掻く手を止めた。


「……ある」

「へぇ、いつ頃?」

「……中3ん時、一個上の女子マネだった憧れの先輩が夏休みの校内合宿ん時に来て、そんで…」

「え?まさか学校でヤッたの?」

「うん…音楽室で…そこはカーペット敷かれてて痛くならないからって」

「……へぇ、すげーな…現実にそんなこと起きるんだ」

「俺の好意に気付いてあっちも意識したみたいで、けど俺が年下だから興味ない振りしてたんだって。でも校内合宿で再会して、思い出話をしてるうちに、ね?なんか…そういう雰囲気になって、セックスして、付き合うことになってた」

「青春してんじゃん…羨ましい」

「でも付き合ってからセックスするタイミングがわかんなくて出来ないでいたら飽きられて夏休み終わったら振られたよ」

「なるほどね…」


慧は終始ヘラヘラとした締りのない顔で語りハァッと大きなため息を吐くと、うなじに置いていた手をだらんと下げた。

後悔の念に押されているのか猫背が際立ち、俯いた顔は瞼を閉じていた。


慧の項垂れた姿を横目で見ながら、慧の初めての女を想像したら、美人でSっ気の強そうな女が出てきた。

逃すなんて勿体無ぇな、とは思うけど、慧じゃ不釣り合いっつーか、振られて当然だろとも思う。


「なぁ、もっかいしよ」


気づくと顔を上げていた慧が、俺をセックスに誘った。


通算して何回目のセックスになるんだろう。

慧の肛門は男性器をすんなりと受け入れるようになり、常に強張っていた表情も緩み、恍惚と俺を見てくるようになった。


濡れた瞳、薄く色づく頬、熱い息を吐き震える唇を目で辿ると胸の辺りが詰まって呼吸がしにくくなってしまう。

結合部に視線を移して激しく出入りする様を視界に映した。

粘液か何かが泡立ってぐちゃぐちゃ音を立てている。


「慧…ッ」

「……っ、名前、呼ぶな」

「…、根に持ってんの?あの日のこと」

「別に…んっ、んッ」


汗で滲む身体を重ねてベッドを軋ませ続けた。

自分の唇からも熱い息と声が漏れていた。

慧には俺がどんな風に映っているんだろう。


「……ッ、凪、待ッ……あっ、やめッ!ひッ!んはっ!」


肉壁を引っ掻く様に肉棒を腹側に擦り付けてやると、慧の声が高く響いた。

前立腺を掠めたんだと悟り、重点的に責め立てると中が強く締め付けてきて俺の精液を絞り出す。


「……ッく」

「ん、はぁっ、はぁ……っ、凪……」

「……、……はぁ、ごめん。中に出した」

「……腹ん中、きもちわりぃんだよ…ばか…」


息子を抜き取ると白濁液も一緒に溢れ出てきて、尻の割れ目を流れる厭らしい光景を目の当たりにした。


顔を横に向け、乱れた呼吸をただ繰り返している慧の思う事なんて何もわからない。

何を考えているかわからないからこそ、この関係が成立しているんだろうと思う。

ハッキリとしたくない。

深く考えたくはない。

ただの退屈しのぎのままでありたい。


慧もそうだろ…?

お前だって、普段は普通の男なんだ。

この行為に退屈しのぎ以外の意味なんてない。


「凪は…女とヤッたことあんの?」

「…、あるよ」

「へー」

「なんだよ、へーって」

「まぁ、あるよな…ついこないだまで彼女いたっつってたもんな」

「……アイツにはガッつき過ぎて振られたんだよ」

「はは、あー……なんとなく、わかるわ」

「わかるとか言うなよ、きめぇな」


後処理を終えるとベッドに仰向けで寝転び、天井を見つめた。

視界の端に映る慧も、同じようにしていた。


俺は再び体を起こし慧の顔を覗き込んだ。

慧は天井から俺に瞳を向けて、視線が絡めば糸を巻かれるように自分の顔が慧に引き付けられて唇が重なった。

触れるだけのキスはやっぱり、物足りなかった。