ラストラブアフェア

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ラストラブアフェア

彼女との別れを決意した。


「ヒロトー、んふふ」


夜、部屋にあげてもらうと早速菜子は抱きついて甘えてくる。


「やっぱりヒロトといるのが1番安心する」


俺は何も言わずに背中に手を回して抱き締めた。


――1番安心する割には一緒にいたがらないじゃん。

そんな不満を胸に抱きながら。


「ねぇ、ヒロトー」

「ん?」

「好き……」

「……ん」


俺が素っ気なくするのは気づいて欲しいからなのか、よくわからない。

でも、気づかない彼女に少し腹が立っていた。


「なぁ…」

「へ?なにー?」

「別れよ」


無邪気な笑顔は一瞬にして雲掛かった。


「え、別れるってなんで?」

「別れたい」

「え、えっ…」

「菜子のこと好きだからこそ、一緒にいるのが辛い。ごめん……」


彼女を力なく見つめた。

何を言っていいのかわかっていないような困惑した表情で俺を見ていた。


「や、やだっ、別れるなんて」

「……」

「好きだからこその意味がわかんないよ。別れたくない!」

「ごめん……」

「私、何かしちゃったかな……?」

「何もしてないよ。とりあえず、別れたいんだ」

「そんな……」


俺の言っている意味を理解出来ていないようだった。

それもそうか。

俺自身、自分の気持ちを隠しすぎて、何を言いたいのか理解できなかったから。


「ヒロト……別れたくないよ」


彼女の目から涙が流れた。

俺を真っ直ぐ見つめる瞳……、やっと捕らえることが出来た。


「ん、俺も別れたくはなかったよ……」


別れると言わなかったら、俺のこと見てくれなかっただろ?

頬に伝う涙を親指でそっと拭ってやる。

彼女は涙を堪えてしゃくりあげた。


「これで、最後だね」

「え……?んっ」


最後のつもりで重ねた唇はしょっぱくて切ない。

強く抱き締めて深く口付けた。

彼女は余計に涙を流して、俺の背中にしがみつく。

何度も角度を変えて口付けを繰り返しながらベッドへ押し倒した。


唇を離すと目に涙を浮かべ虚ろな眼差しで俺を見つめる彼女がいた。


「最後なんて、嫌だよ」

「ん……」


うわ言のように呟いた台詞。

曖昧な返事をして、彼女の首筋に顔を埋めた。

いい匂いがして、安心する。


でもそれは、別れを切り出したことによって俺だけを想ってくれてるからだ。

最期でしか味わえないもの――。